糖尿病とお酒
糖尿病治療の3本の柱とは「食事療法・運動療法・薬物療法」です。
食事療法とは糖尿病の患者さんの体質などを考慮して食生活を見直す事によって糖尿病の改善をはかる治療法で、
運動療法とは適度に筋肉運動をする事によって脂肪を燃焼させ、さらに運動によってインスリンの効果を高めて血糖値をコントロールするという方法
薬物療法とはインスリン注射や血糖降下剤を飲む事です。
その中でも食事療法が糖尿病治療において最も重要なのは皆様よくご存じのとおりです。
何故糖尿病の治療において食事療法が最重要視されるのかと言えば、食事療法が正しく行われなければどれだけ良い薬を使って治療をしても、糖尿病の改善効果を充分に出す事が出来ないからです。
そして、糖尿病の患者さんによっては食事療法と運動療法だけで糖尿病が改善される事もあると言います。
つまり、食事とは生活の基本であり、これがガタガタでは治るものも治らないと言えましょう。
糖尿病の食事療法とは、簡単に言えば「自分の適正体重とエネルギー量(カロリー)を知り、定められたエネルギー量を規則正しく摂取し、ビタミンやミネラル、そして食物繊維は充分摂取する」という事です。
そして、糖尿病の患者さんはお酒(アルコール飲料)もあまり飲まない方が良いと言います。
その理由の一つに、お酒のカロリーが高い事があげられます。
最近では糖質ゼロのビールが発売されていますので、糖尿病の人はそれを飲めば良いような錯覚を覚えます。しかし、糖質ゼロのビールにも落とし穴があります。
そして、糖質がゼロと言っても少量の糖分が入っている事もあると言います。
このあたりはオレンジジュースなどの果物のジュースが厳密に言えば100%果汁で出来ていなくても「100%」と表記されるのと同じようなものと考えていいでしょう。つまり、額面どおり受け取ってはいけないという事なのです。
そして、糖質ゼロのビールとはあくまでも「糖質がゼロ」なのであって、「カロリーがゼロ」なのではありません。
それでは、お酒のカロリーとは、どれくらいあるのでしょうか?
お酒のカロリーは1gあたり7kCalあります。
「7kCal」と言われてもピンと来ないかと思われますので、他の栄養素でたとえてみましょう。
糖尿病の大敵と言われる糖質の1gあたりのカロリーは4kCalと言われています。
そして、ダイエットの大敵であり、カロリーの塊というイメージのある脂質の1gあたりのカロリーは9kCalです。
つまり、お酒のカロリーは糖質の2倍に近いカロリーがあるというわけです。
ひどい言い方で恐縮ですが、お酒とは糖質の2倍近くのカロリーがある、むしろ脂質に近いくらいの高カロリー飲料だと言えるでしょう。
このように、お酒とはカロリーが高い飲み物です。
その割には食物繊維などの身体にとって必要な栄養素はほとんど含まれていませんので、お酒ばかり飲んでいると栄養素の欠乏を招く恐れもあります。
よって、お酒とは糖尿病の患者さんだけではなく、ダイエットのためにもあまり良い飲みものとは言えないという事になります。
お酒の弊害とはそれだけではありません。
体内に入ったアルコールは、インスリンが分泌されるのを阻害するだけではなく、インスリンの働きをも阻害するのです。
それだけでも糖尿病の人にとっては問題ですが、さらに問題なのが、解毒の役目を担う肝臓は体内にアルコールが入って来ると、糖尿病の治療薬の解毒よりもアルコールの分解を優先させてしまいます。
そのため、糖尿病の治療薬の効果が強くなり過ぎてしまい、低血糖症を招く恐れもあります。
さらに問題なのが、アルコールが肝臓障害を引き起こしたり、糖尿病の合併症を悪化させてしまう要因になり得るという事です。
つまり、糖尿病の人はお酒を飲まないに越した事はありませんが、どうしてもお酒を飲みたいのであれば、担当医と相談し、その指示に従わなければならないという事なのです。