糖尿病とカロリー
糖尿病は「高血糖症」と言い換える事も出来るでしょう。
…と言いますのが、血糖値が異常なまでに高い状態が続くのが糖尿病だからです。
糖尿病を発症していない人でも、食事をした後には血糖値は上がります。
しかし、インスリンというホルモンが分泌される事によってやがて血糖値が下がります。
しかし、糖尿病の患者さんはインスリンの分泌量が充分でないため、血糖値を下げる事が出来ません。
つまり、高血糖状態がずっと続く事になります。
糖尿病、つまり高血糖症の治療を一言で説明すると、「いかにして血糖値をコントロールするか」という事なのです。
まずは血糖値を高くしない事。
そして、本来ならば脳や筋肉を動かすためのエネルギー源であるブドウ糖をそのエネルギー源として使うようにする事が求められるのは言うまでもないでしょう。
その「血糖値を高くしない事」に相当するのが糖尿病の食事療法です。
「糖尿病の食事療法」と言えば物々しいですが、簡単に言えば「1日の摂取カロリーを、糖尿病の患者さんの標準体重を維持出来るだけに抑え、
それを3回に均等に分けて栄養バランス良く規則正しく食べる」というものです。
「標準体重を維持出来るだけのカロリー」と言っても患者さんの身長だけで割り出すのではなく、仕事の内容などによって一人一人消費カロリーは違って来ます。
たとえばデスクワークが主な方と建設業など肉体労働が主な方では消費カロリーが違いますので、
当然摂取カロリーも違って来ます。そういう事も計算した上で1日の摂取カロリーを割り出します。
何故1日の摂取カロリーを3回均等に分ける必要があるのかと言えば、1日のうちの1食を少なめにすると、
必ず残りの2食のうちどちらかでどか食い…とまではいかないまでも、食事を多く摂ってしまうからだと言われています。
しかし、1日の摂取カロリーを3回均等に分ける理由とは、「必ずしもそれだけとは言い切れない」という説もあります。
よく、「朝ご飯は入らないから…」と言って朝食を抜くと、昼食を食べたあとの血糖値がぐんと上がってしまうからやめた方がいいという説もあるのです。
これはダイエットのお話になりますが、3食のうちの1食を何らかの食品に置き換えるという、
いわゆる「置き換えダイエット」や断食ダイエットの類はリバウンドしやすいという事を耳にした事のある方もいらっしゃるかと思われますが、
それは置き換えダイエットや断食ダイエットをする事によって身体が栄養不足になっているところに食べ物が入って来ると、
身体は栄養をたくさん吸収しようとして、却って太ってしまうという事なのです。
恐らく「朝食を抜くと昼食後の血糖値がぐんと上がる」という理由もそれと同じなのではないかと筆者は考えています。
前にお話したとおり、ブドウ糖とは本来脳や筋肉を動かすためには必須のエネルギー源です。
そのため、糖尿病とは逆に血糖値が下がり過ぎると、ヒトの身体はブドウ糖を摂取しようとするシステムである低血糖発作を起こしてブドウ糖を摂取させようとするほど、
ブドウ糖とはヒトの身体にとっては必要なものなのです。
そして、朝目覚めた時、ヒトの身体は血糖値が低くて脳や神経の働きが鈍い状態になっています。
それを補うのが朝食なのですが、その朝食を抜けば、ブドウ糖というエネルギー源が不足している状態でヒトの脳や身体は動かなければならないという事になります。
そのような状態で昼食を食べれば、身体が栄養を効率良く吸収し、ブドウ糖を多く身体にため込もうとするというシステムがヒトの身体に備わっているとしても、不思議ではないと筆者は考えています。
(蛇足ながら「朝食抜きダイエットをすると太る・糖尿病になる」という噂がありますが、理由は上記のとおりかと思われます)
そして、栄養のバランス良く食べるというのも、置き換えダイエットや断食ダイエットの類はリバウンドしやすいのと理屈は同じかと思われます。
実際筆者も(これもダイエットのお話になりますが)、インスタント食品など栄養の偏ったものばかり食べていた日には、
1日に食べた量は少なかったにもかかわらず体重はあまり減りませんでしたが、
ちゃんと野菜も摂って栄養のバランスを良く摂った日には1日に食べる量は普段どおりでも体重は減りやすかったという経験があります。
おそらく、ブドウ糖にも同じ事が言えるのではないでしょうか?
糖尿病の患者さんは単純にカロリーだけを考えて食べるのではなく、
ここで取り上げた「朝食を抜かない」・「1日3回摂取カロリーを均等に摂る」など、
カロリー以外の事にも気を付けて、食後の血糖値を上げ過ぎない努力が必要だという意見もあります。
たとえば、味付けの濃い食事は、つい、食べ過ぎてしまいますので、
それを防ぐために食事の味付けは薄い方が良いとか、早食いをするとインスリンの分泌量が食べるスピードに追い付かず、
結果として食後血糖値を上げてしまいますので、ゆっくりよく噛んで食べるという事も、糖尿病の患者さんは気を付けた方がいいでしょう。
また、最近糖尿病の患者さんには低炭水化物食が良いと言われていますが、これも理由があります。
炭水化物は体内で消化されてブドウ糖になります。
その量を減らせば必然的に血糖値が下がるというわけです。
そのため、最近では食品を買う時には食品のカロリー数にだけ目が行ってしまいますが、炭水化物がどれだけ含まれているのかもチェックした方が良いと言われています。
ただし、何度も繰り返しますが、本来ブドウ糖とは脳や筋肉を動かすために必須のエネルギー源です。
よって、全く炭水化物を摂取しないのも問題があります。
低炭水化物食に興味のある糖尿病の患者さんは、担当医とご相談の上、低炭水化物食を試してみて下さい。