女性と糖尿病
女性は糖尿病になりにくいか?
糖尿病と言えば中高年の男性がなるものというイメージがありますが、果たしてそれは本当なのでしょうか?
実際の糖尿病の患者さんは弱冠男性の方が多いとの事ですので、その意味では「糖尿病は中高年の男性がなるもの」というイメージは正しいという事になります。
(糖尿病の患者さんの男女比は男性1に対して女性0,6との事ですので、本当に弱冠の差でしかありませんが)
ならば、女性であれば糖尿病になりにくいのかと言えば、必ずしもそうではない、むしろ、いわゆる「生活習慣病としての糖尿病(2型糖尿病)」になりやすい要因は女性にある」という意見もあります。
どういう事なのでしょうか?
2型糖尿病(以下糖尿病と表記させていただきます)の発症年齢を男女別に見ると、男性の糖尿病発症年齢は40代から50代くらいが最も多く、女性の糖尿病発症年齢は50代から60代が最も多いのだとの事です。
そして、年齢が高くなり、糖尿病歴が長くなるにつれて、糖尿病の合併症を持っている方の割合は女性の方が多くなるのだと言います。
「糖尿病歴が長くなれば当然、血糖のコントロールが出来なくなる方の割合も増えて結果的に糖尿病の合併症を起こす方の割合も多くなるのでは?」と首をかしげる方もいらっしゃるかと思われますが、それだけが理由ではないと言います。
女性は50代になると閉経を迎え、それによって女性ホルモンの分泌が不足するために血糖のコントロールが上手く行かなくなるのがその大きな原因です。
詳しくお話すると、女性には女性ホルモンが分泌されるのですが、この女性ホルモンと呼ばれるものにも種類があり、その代表的なものがエストロゲン(卵抱ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンです。
このエストロゲンには血糖のコントロールをするインスリンというホルモンの感受性を強くする作用もあり、肝臓から糖の放出を抑え内蔵脂肪をつきにくくする効果がある事がわかって来ました。
ところが、もう一方のプロゲステロンはインスリンの感受性を悪くしてしまいます。
閉経を迎えた女性はインスリンの感受性を良くするエストロゲンの分泌が減少する事によってインスリンの感受性を悪くするプロゲステロンの働きによって血糖がアップしてしまうと言うのです。
つまり、閉経前の女性はこのエストロゲンによって糖尿病の発症をある程度抑えられている状態にあると言えるでしょう。
中にはホルモン療法をすすめているところもありますが、ホルモン療法自体の安全性について、現在のところ問題がないとは言い切れない状態にありますので、筆者個人的な意見としては、将来的にはわかりかねますが、現在の状況を見る限り安易にホルモン療法をおすすめする事はいたしかねます。
また、平均寿命は男性よりも女性の方が長い事は皆様ご存じのとおりですが、糖尿病に関しては男性よりも女性の方が予後が悪いと言われています。
そして、糖尿病の合併症の中に現在のところ骨粗鬆症は含まれていませんが、女性の糖尿病の患者さんは骨粗鬆症になりやすいとされています。