アディポネクチンと糖尿病
アディポネクチンと糖尿病
近年のダイエットブームや糖尿病などのメタボリックシンドロームが原因の病気の患者さんの増加によって悪者にされがちな脂肪細胞ですが、ヒトの身体には必要なものです。
食べる物がなくなってエネルギーが不足した時には、脂肪細胞がそのエネルギーになる事は皆様ご存じかと思われますが、内蔵を守るクッションの役目を果たしている事は知られていないのではないでしょうか。
それ以外にも、脂肪細胞がホルモンを分泌するというお話も知られていないのではないでしょうか。
脂肪細胞が分泌する善玉ホルモンの中でも注目されているのが、アディポネクチンです。
アディポネクチンとは、1996年に松澤裕次住友病院院長たちが発見したサイトカイン(生理活性物質)です。
何故アディポネクチンが注目されているのかと言えば、糖尿病の治療法の3本の柱の一つである食事療法においてのカロリーコントロールの負担を減らす事が出来るという、糖尿病の患者さんにとって夢のような新薬の開発のカギを握っているのがこのアディポネクチンだと言われているためです。
(ちなみに、脂肪細胞が分泌するホルモンには善玉ホルモンと悪玉ホルモンがありますが、ここでは悪玉ホルモンのお話は割愛させていただいて、脂肪細胞が分泌する善玉ホルモンであるアディポネクチンに焦点を当ててお話させていただきます)
ご存じのとおり、糖尿病とは血液中のブドウ糖の濃度が異常なまでに高くなる病気で、その治療法の中でも最も重視されているのが食事療法です。
糖尿病の食事療法
それを簡単に言えば「1日の摂取カロリーを標準体重を維持出来るだけに抑え、そのカロリーを3回均等に栄養バランス良く規則正しく摂取する」というものです。
しかし、現実には1日3食栄養のバランス良くカロリーも標準体重を維持出来るだけに抑えるというのはなかなか難しいものです。
特に、30代・40代くらいの働きざかりのサラリーマンであれば、お昼は外食という事も珍しくないでしょう。
朝食・夕食は規則正しく栄養バランスも良く食べる事が出来ても、家の外に出て働いているサラリーマンにとっては、昼食が最も食事療法がやりにくいのが現状です。
そこで注目されているのが、何度も出て来ているアディポネクチンなのです。
アディポネクチンには肥満や動脈硬化を遅らせる働きの他に、肝臓や筋肉で脂肪を燃やして血液中のブドウ糖の濃度を低くする働きがある事がわかって来ました。
しかし、このアディポネクチンは肥満すれば肥満するほどその分泌量が減り、特にメタボリックシンドロームの原因である内蔵脂肪が増えるとその分泌量が減るという特徴があるのです。
いわゆる「生活習慣病の一種である糖尿病」である2型糖尿病の原因は肥満です。
つまりは生活習慣病の一種である糖尿病の患者さんの体内ではアディポネクチンの分泌量が減っている事になります。
そして、そのアディポネクチンの分泌量を増やすには、運動をする事だと言われています。
糖尿病の治療法の中には運動療法がありますが、それはアディポネクチンの分泌量を増やすためにも良いという事になります。
しかし、膝が悪い人など事情があって運動療法が出来ない糖尿病の患者さんもいらっしゃいます。
そのような事情をかかえた糖尿病の患者さんはアディポネクチンの分泌量を増やす事は出来ないのかと言えば、必ずしもそうとは言えません。
現在でもアディポネクチンの分泌量を増やして血糖値を下げる薬はある事はあるのですが、心臓の悪い人には悪影響が現われる事が知られているため、糖尿病の患者さん全員に使えるわけではないというデメリットがあります。
しかし、アディポネクチンの受容体にあてはまる、家で言うところの「カギ」に相当するものを見つける事が出来れば、アディポネクチンの受容体だけに直接働きかける事が出来ますので、副作用などの心配なく、アディポネクチンの分泌量が少ない患者さんもその量を正常値に戻す新薬が出来るのではないかと期待されているのです。