インフルエンザA型
インフルエンザA型とは
インフルエンザの病原ウイルスであるインフルエンザウイルスには、蛋白質の違いなどからA型、B型、C型の大きく3種類に分けられます。
その中でも最も種類が多いのがA型インフルエンザです。
A型インフルエンザは全体の約60%を占めていて、変化しやすいと言われるインフルエンザウイルスの中でも最も変化しやすいタイプです。
ロシア風邪や香港風邪、最近ヒトへの感染が懸念されている鳥インフルエンザも分類上はA型インフルエンザになります。
A型インフルエンザはウイルスの表面にある糖たんぱく質、ヘマグルニチン(HA)とノイラミニターゼ(NA)の変異が多く、これまでにHAが16種類、NAが9種類ある事がわかっています。
そしてHAの16種類とNAの9種類全ての組み合わせが可能なため、亜科も多いのです。
中でもソ連型と呼ばれるH1N1というタイプのA型インフルエンザの亜科は、以前はスペイン風邪と呼ばれ、1918年~19年に世界中に蔓延し、感染者は6億人、死者は5,000万人にのぼったと言われています。
当時の世界の人口が約18~20億人だったと言われていますので、当時の全人口の約3割がスペイン風邪に感染した計算になります。
このように、A型インフルエンザは3種類のインフルエンザの中でも最も感染力が強く、爆発的な大流行を起こします。
さらに症状も重く、発熱やのどの痛みや咳、筋肉痛や結膜炎などの症状が現われ、重症になると細菌性の肺炎などを引き起こして死亡するケースもあります。
特にハイリスクグループと呼ばれる乳幼児や65歳以上の高齢者、呼吸器や循環器に病気を持っている人や糖尿病の人、腎臓や免疫の機能が低下している人は注意が必要です。
そして、ヒトだけではなくて鳥や豚など種を超えて感染する事でも知られているのがこのA型インフルエンザなのです。
その中でも最も注意が必要なのはH5N1亜科で、ヒトや鳥だけではなく多くの動物に感染してインフルエンザを起こす事でも知られています。
H5N1の宿主は野生の水鳥です。
本来の宿主がH5N1に感染してもインフルエンザを発症する事はありませんが、家禽として人間に飼われているニワトリなどがH5N1に感染した時にはその多くが死に至ります。1997年香港では18人がH5N1に感染し、その中の6人が死亡しました。
現在のところH5N1は家禽として飼われているニワトリなどからヒトへの感染は認められていますが、H5N1に感染したヒトからヒトへ感染したという報告はありません。
しかし、ヒトに感染したH5N1がヒトの体内でヒトインフルエンザと遺伝子再集合する事によってH5N1とヒトインフルエンザの両方の特徴を持った新型のインフルエンザウイルスが誕生する可能性はないとは言い切れません。
恐ろしい話ですが、現在のところはH5N1のヒトからヒトへの感染は確認されていませんが、将来遺伝子再集合によってH5N1の死亡率の高さとヒトインフルエンザウイルスの感染力の強さを併せ持った新たなインフルエンザウイルスが登場する可能性もないとは言えないのです。
H5N1は現在パンデミックを引き起こす可能性も示唆されています。もし、H5N1の遺伝子を持つ子孫によってパンデミックが起こったら、スペイン風邪よりも致死率が高くなってスペイン風邪よりも大規模なパンデミックになるのではないかと予想されています。