甲状腺がん 手術

甲状腺がんの手術について

「がんの治療法」と言えば真っ先に「外科療法(手術)」を思い浮かべますが、それは甲状腺がんにも当てはまります。

その甲状腺がんの手術に関しては、甲状腺がんの種類にもよっても違って来ますが、ここでは主に最も発症頻度の高い乳頭がんについてお話したいと思います。

乳頭がんについては、超音波診断でがんの広がりを確認した上で出来るだけ甲状腺を温存する事を選択する事が多いのですが、アメリカでは乳頭がんの手術をする時は甲状腺を全摘する事が多いとの事です。

これには理由があります。

素人には「甲状腺にがんが出来ているのなら、がんだけを摘出すればいいのではないか」と考えてしまいますが、がんだけを摘出するのは、がんを取り残す危険性があります。がんの取り残しがあればやがて取り残されたがんが増殖を開始して、がんの再発を招くのは甲状腺がんに限った事ではありません。ですから、がんの再発を防ぐにはがんの取り残しを避けるために摘出する面積を出来る限り広くします。

その意味で、甲状腺の全摘手術が最も甲状腺がんの再発を防ぐのに適しているのは言うまでもありません。

それ以外にも甲状腺の周囲には声帯や気管、食道などの重要な器官がありますので、がんが大きくなってそれらの機能に支障をきたさないうちに甲状腺を全摘するという理由もあります。

しかし、甲状腺を全摘してしまうと、甲状腺の後ろに位置する副甲状腺の機能が低下する危険性もありますし、声帯を動かす役目をする反回神経を切ってしまう危険性もあります。

日本では欧米よりも超音波診断が普及している事もあって甲状腺内の小さながん転移まで診る事が出来るために、超音波診断による診察結果を元に甲状腺を温存しても、温存した甲状腺からの再発率は癌研病院では1%台とかなり低いとの事です。

しかし、これはあくまでも日本の標準的な手術法だというお話であって、日本でも甲状腺がんの手術と言えば甲状腺を全摘した上でその周囲のリンパ節を切除する「リンパ節郭清」をするという医療機関もありますので、甲状腺がんの中でも特に乳頭がんの場合は、手術を受ける時には、甲状腺を全摘して甲状腺がんの再発を防ぐか、甲状腺がんの再発の危険性は残されるものの、甲状腺を温存して生活の質の向上をはかるのか、患者さん自身が選択する必要があります。

(蛇足ながら日本でも肺などに遠隔転移を起こした高危険度乳頭がんの場合はアメリカ同様に甲状腺全摘してから放射性ヨードによる治療を開始するのが標準的な治療法だという事を付け加えておきます)

どんな種類のがんの手術でも合併症という弊害が出る事がありますが、残念ながら甲状腺がんの手術にも合併症が出る事があります。

たとえば反回神経麻痺。

これは反回神経働きが悪くなるために声帯の動きが悪くなり、声がかすれるというものです。これは反回神経を切断した場合を除き大抵は元に戻ります。

また、ごくまれにリンパ節郭清の際に横隔神経を損傷した結果、神経を損傷した方の横隔がたるむ事があります(横隔神経損傷)。これは通常は胸部レントゲンで撮影してみて初めて気付くもので、横隔神経損傷によって自覚症状が出る事はまれだと言います。

そして、その中でも深刻なのが、のどに手術痕(傷跡)が残る事です。

甲状腺がんの罹患者は女性が多いのが特徴の一つで、当然ながら若い女性の罹患者も多いです。甲状腺がんの手術によって首におよそ15cmもの大きな傷跡が残るのは、特に若い女性にとっては苦痛です。

傷跡が残る事は見た目が悪いというだけの問題ではありません。

手術で甲状腺を摘出する際にはどうしても甲状腺の前に位置する首の筋肉群を切ってしまいます。甲状腺を摘出したあとに首の筋肉群を縫い合わせますが、首の筋肉群を切った時にそこを通っている神経も一緒に切ってしまっていますので、やがては首の筋肉が委縮して、へこんでしまう事もあるとの事です。それだけではなく、首の横にある胸鎖乳突筋という筋肉が硬くなってしまったためにひどい肩こりに悩まされる人もいらっしゃると言います。

それを解決したのが見えにくいところは内視鏡を入れて見る事によって手術をするという、「内視鏡補助下手術」です。「内視鏡補助下手術」によってわずか2,4cmの切開で済むようになりました。

しかし、この「内視鏡補助下手術」は誰でも出来る手術法ではない事が最大のデメリットです。

首には重要な神経や血管が多く通っていますので、わずかな傷口からそれらを切断しないように手術をするのはかなりの技術が必要なのは言うまでもありません。

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